すみえのいろいろ日記

本来自分の好きな音楽を語るブログとして開設しました。これからは占星術を中心により幅広いトピックについて色々と書いてみようと思います

Peng Black Girls/ ENNY

こんにちは。

 

今日は久しぶりのこのブログの当初の趣旨であった曲紹介と歌詞翻訳をしたいと思います。

 

この曲大好きすぎて、逆になんで今まで紹介していなかったのか謎なのですが、今日久しぶりに彼女の他の曲を聴いてくらってこの曲のことも思い出したので、気合い入れて愛を込めて紹介したいと思います。

 

ENNYはロンドンで生まれ育ったナイジェリア系の女性ラッパーです。

曲の中では女性・黒人・ナイジェリア系として生きることに関して歌っていることが多いです。

 

最近って、マイノリティ性をアイデンティティとして活動するアーティストがとても増えてきていますし、ガールズエンパワメントも一つのジャンルになるんじゃないかと思うくらいよく歌われるテーマになりましたよね。

それが悪いと言いたいわけではもちろんないのですが、彼女の切り口と言葉の運びのレベルが本当にとにかく高すぎて、頭ひとつ抜けているんです。

 

あと、曲聞いてもらえればわかると思うんですけどシンプルにラップがバチくそに上手いです。

ラップのうまさって人によって見るポイントが違うと思うんですけど、私はリリックの深さとフローが特に大事というか、その2点に強みを持っているラッパーに非常に惹かれます。

 

ENNYのリリックは写実的でシンプルなものから詩的なもの、ぐさっとくる様な的を得た短いセリフ、ユーモアに富んだものなど本当にカラフルで美しいです。

フローについても、すごく脱力感のあるリラックスしたスタイルですが、リズム感も抜群だしフローのバリエーションもあるので聞いていて飽きないです。

好きなフィーメールラッパーはたくさんいますが、本当に彼女はずば抜けていると思います。

 

てなわけでとにかく愛が溢れて仕方ないんですが、そんな中でも私が一番気に入っているpeng black girlsを紹介したいと思います。

pengとはイギリスのスラングで可愛いとか魅力的という意味があるそうです。

 

この曲は私が知る限り3つのバージョンがあります。

原曲がこちら

www.youtube.com

 

今日はこのバージョンの歌詞を一部抜粋して紹介したいと思います。

 

次にプチバズを引き起こしたjorja smithとのコラボのcolors

www.youtube.com

 

実はこれ、ENNYより比較的肌の色が明るいjorjaがコラボすることで曲の人気に火をつけたことに対する批判があったりしました。

正直、人種や肌の色に関する論争は地域によってもまた新たなコンテクストがあったりして部外者がついていくには非常にハードルが高いです。

そもそも何も口出しできる立場ではありませんが、極東のアジア人女性にもこの曲は響いたよとだけ書いておきましょうか。音楽は国境を越えますね。(誰)

 

で、最後にapple session versionがあります。ENNYがソロでアコースティックバージョンで歌っています。一応探してみましたがYoutubeには載っておらず、Apple Musicでのみ視聴可能なようです。

Peng Black Girls

Peng Black Girls

  • ENNY
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

music.apple.com

 

どのバージョン訳そうかな〜とか思っていたのですが、そもそもスラングが難しすぎて自信持って訳せないところがちらほらあったので、原曲バージョンの中から、私なりにある程度解釈できたであろう箇所のうち、お気に入りの部分をかいつまんで紹介する形にしようと思います。

 

 

There’s peng black girls in my area code
Dark skin, light skin, medium tones
Permed things, braids, got mini afros
Thick lips, got hips, some of us don’t
Big nose contour, some of us won’t
Never wanna put us in the media, bro
Want a fat booty like Kardashians? (No)
Want a fat booty like my auntie got, yo

私の市外局番に可愛い黒人の女の子がいる

暗い肌、明るい肌、ミディアムトーンの肌

パーマ、ブレイズ、小さなアフロ

厚い唇に大きなお尻、そうじゃない子もいる

大きな鼻にシェーディング、してない子もいる

私たちのことメディアに載せないでよ

カーダシアンみたいにでっかいお尻がいいって?

私の叔母さんみたいなでっかいお尻がいいだなんて

 

開始早々市外局番とかありえなくダサい単語がでてきて私もびっくりしたんですが、外国だと自分の出身地域の市外局番が歌詞にでてきたりとかするんですよね。自分の生まれ育った土地をレペゼンするニュアンスで使ってるんだと思うんですけど、正直日本で生活してる身からするとどこから市外局番が切り替わるかも頭に入ってないから馴染みないですよね。

歌詞では黒人の女の子のビジュアルをシンプルに描写していますが、そうじゃない子もいると言及するところがすごく好きです。分厚い唇や大きなお尻、大きな鼻は黒人の身体的特徴として典型的なものですが、当然そうではない人も存在するんですよね。

一口に黒人と言ってもいろんな見た目の女の子がいて、それぞれがそれぞれの形で自分の外見を楽しんでいるのが伝わってきます。

 

That’s cool, I like it
The growth, the light
The pain, the fight
We love, we fight
We hurt, we cry
He paid the price, you’ll be alright

I think I need some time away
I took a little time, I prayed
We gon’ be alright, okay
Alright, okay, alright, okay
I think I need some time away
I took a little time, I prayed
We gon’ be alright, okay
Alright, okay, alright, okay, alright, okay

いいね、かっこいい

成長、光

痛み、闘い

愛して、闘って

傷ついて、泣いて

彼は代償を払った

あなたはきっと大丈夫

 

少し1人の時間が必要

少し時間をとって祈った

私たちは大丈夫、きっと大丈夫

 

サビ前からサビにかけて、非常にシンプルな歌詞ですがずっしりきます。

ENNYとその身近な女性たちが共に経験してきた困難と、これからそれは癒やされていくという静かな希望が感じられます。

ここも、「私は男なんかいらないんだから!」みたいなわかりやすいガールズエンパワメントではなくて、静かででも深いところで感じる痛みと癒しが込められていると思います。

 

He said to me, "They put guns in the streets That's what they wanted for me"

And I said, "G, someone can fix your plate but no one can force you to eat"

彼は言ったの「奴らがストリートに銃を持ち込んだんだ、あいつらがそれを俺に求めてたんだ」

私は言った「料理を準備してやることはできても、誰も無理に食べさせることはできないのよ」

 

ここのフレーズ、曲の中で一番好きです…

この後の歌詞も含めて考えるとここでいう彼はおそらくENNYと同じナイジェリア系の黒人で、イギリスにおいては弱い立場に立たされていて、なんらかの事情で銃を使わなければならない立場にいたのでしょう。

でも、その様な環境にいたとはいえ、銃を使うという選択をしたのは自分でしょ?とバチバチの正論をお見舞いするENNY。

しかもその言い方がオシャレすぎる…こんなウィットに富んだオシャレかつ鋭い言い回しありますか????

これ、具体的な状況は違えど似た様な場面て結構ありそうだなと思いました。

周りにやらされたと自分の行いを正当化しているけど、とはいえやってるのは自分じゃん??というね・・・

 

Like when will he see himself as a king

And not just a pawn in these streets?

And when will we come together as a tribe 

And be what's intended to be?

I just wanna be free

いつになったら彼は自分のことをストリートの駒の一つじゃなく

王様だと気づいてくれるのか

いつになったら私たちは私たちは一つの部族としてあるべき姿になれるのか

私はただ自由になりたいだけ

 

さっきの鋭い一言の裏に、愛情があるのが垣間みえます。

おそらく他の男性との力関係の中で不利な状況に置かれている彼は自信を失って周りの言うことに従うことでしか自分の居場所を保つことができないと考えているのでしょう。

そんな彼に対して自信を取り戻してほしいと願う気持ちが伝わります。

さらに、その様に彼が自信を取り戻した先にはENNYと彼は同じ黒人として(もしくはナイジェリア系として)手を取り合い力を合わせていけると彼女は考えていると思いますし、彼女はそれを強く望んでいます。

このワンフレーズは本当に様々な文脈が詰まっていると思います。

 

イギリスにおいて黒人として生きている時点で2人は弱い立場に置かれているにも関わらず、男女という性別の壁によって彼らは本来存在するはずの絆や連帯がさらに結びにくくなっています。

最後のI just wanna be freeも力強いメッセージにも聞こえますし、こんな現状に疲れたというぼやきにも聞こえます。

 

兎にも角にもリアルでそこそこヘビーな内容なんですが、ただただ嘆いていると言うわけでもなく、空元気で励ましてくるわけでもなく、とにかく描写しているとところがすごいです。

 

あと、jorja smithとのコラボバージョンの中のリリックで

I was black back when it wasn't even in style

というフレーズがあってこれも大好きです。

黒人が流行る前からずっと黒人だった、と言う意味です。

 

ここ数年でBlack Lives Matterだなんだと黒人の人権向上が声高に叫ばれ、

黒人の文化に対してもリスペクトが高まってきました。

が、それと同時にルーツや歴史を知らないでファッションや流行の様に消費している人もいるんでしょうし、これまでの冷遇からすると手のひら返し感がすごい、と当事者はきっと感じているのではないかな、と思います。

流行ってようが、かっこよかろうがそうじゃなかろうが黒人はずっと黒人だった、というのは当たり前の事実ですがいかに世の中の黒人に対する扱いが時の流れの中で変わっているのかを浮き彫りにするセリフだと思います。

 

当然一緒くたにはできませんが、散々馬鹿にされ、差別されてきた韓国人が、KPOPの流行とアメリカでの受容も通じて、日本でもついに大衆文化の一つとして受け入れられたこと、アメリカにおける異常と言っていいまでのKPOP熱と韓国エンタメへの崇拝をみていると、私はなんだか似た様な気持ちを感じます。(私は韓国人ではないですが、今ほどの大騒ぎになる前から韓国の文化やエンタメが好きで、周りの人のリアクションの変化を目の当たりにしたので)

ちなみにさらにいってしまえば、中国人はいまだにそういった羨望の対象にはなっていませんよね。幸か不幸かわかりませんが、歴史の闇をかんじます(これはまたいつか)

 

ということで長くなりましたが、とにかく頭を抱えたくなる様な場面もまだまだありますが、力強く生きていきましょう。

是非是非、それぞれのバージョン聞いてみてください!

 

では!